2019年4月3日水曜日

子どもと日本語

外国で子どもを育てていると、子どもに日本語をどこまで勉強させるべきか、また自分はどこまで現地語を勉強するべきかを意識させられます。

私が住んでいるスイス・チューリッヒ州では、現地の人はドイツ語の方言であるスイスドイツ語 (Schweizerdeutsch) を話し、書き言葉や教育の現場では標準ドイツ語 (Hochdeutsch) が使われ、またドイツ語を母語としない人とは英語でやり取りすることが多いです。
子どもが小さく親と過ごす時間が長い間は親の母語である日本語が強くなり、親との会話や日本語を話す子ども同士の会話は日本語になります。しかし初等教育が始まると、日本語よりもスイスドイツ語に触れる時間の方が多くなり、また学習も標準ドイツ語で行われるために、限られた日常生活の場面でのみ使用される日本語よりもドイツ語の方が次第に強くなってきます。家庭でも兄弟同士が現地語で話し始めたり、親への返事もドイツ語の単語が混ざったり。

この状況下で日本語を維持するためには、親も子どももそれなりの時間と労力を費やす必要がありますが、現地校での生活が忙しくなってくるに従い徐々に疑問が湧いてきます。

日本語の学習に時間を割くより、現地語を母国語とする子どもと比べると相対的に弱くなりがちな現地語の習得に時間を割くべきではないか?
日本語習得のために投資をすると決めたのであれば、何を目標に、どのように日本語を学ぶべきなのか?

このような疑問に対して、第二言語習得・バイリンガル教育の専門家の立場から過去の研究成果と理論をコンパクトにまとめ、言語形成期の子どもを持つ親向けのアドバイスとして紹介しているのが「言葉と教育 海外で子どもを育てている保護者のみなさまへ」。

大人が外国語を学ぶ場合と異なり、子どもが言語を学ぶ際には単語そのものの意味(熱いとはどういこと?)も学習し、またその言語を使って、より高度な概念や論理的思考力を組み立てていく必要があります。その際に親が自信をもって使える言葉で会話することは、子供の学習を助け、また子供の理解の程度を細かく把握できることに繋がります。
加えて親との意思疎通がスムーズに行えることは精神衛生上も重要で、ここでも親の母語を使えることは大きなアドバンテージになります。子どもが大きくなってくると、言葉の表面的な意味だけでなく、そこに込められたニュアンスや裏の意味も理解する必要がありますが、これは母語でないと誤解が生じがち。

子育てや教育に関しては実体験に基づく話を耳にする機会も多いですが、本を読んでいると状況は千差万別なことに気づきます。子どもの年齢、両親の母語、日本への帰国の可能性、また現地校におけるサポートの有無など、様々な要因によって適切な対処方法は変わってくる。海外で子育てを行う人には、ぜひ読んで欲しい一冊。

同じ著者による、より広範な研究成果をまとめた書籍が「完全改訂版 バイリンガル教育の方法」。こちらは言語形成期の子どもがいる海外在住者だけでなく、日本における子どもの外国語教育や外国人児童の受け入れなどもカバーし、またアドバイスの背景にあるデータや研究成果にも詳しく触れています。

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