2015年12月29日火曜日

2016年 スイス居住者のマイレージサービス選び

仕事やプライベートで飛行機に乗る機会がそれなりにあるので、航空会社の FFP (Frequent Flyer Program, マイレージサービス) は関心事。今年までは全日空 (ANA) の ANA マイレージクラブを利用してきましたが、スイスへの移住に伴い、来年から見直しを考えています。

ANA マイレージクラブは日本在住だと使い勝手が良いのですが、これで上級会員になるための条件として「ANA自社運航便で暦年に25,000ステータスマイルを獲得すること」というのが最近追加され、スイス在住で特に日本出張が多く見込まれるわけではない身には達成が難しくなりました。
具体的にどの程度のハードルかというと、毎年スイスから日本に2回ビジネスクラスで往復するか、エコノミークラス正規割引運賃だと3回往復する必要があります。

他社の FFP を調べたところ、仕事で頻繁に飛ぶ、それこそ隔月でビジネスクラスで米国やアジアに出張という状況なら、スイスインターナショナルエアラインズの Miles & More に入るのが良さそうです。なにしろチューリッヒ空港を拠点とする航空会社ですし。
しかし、そこまでは頻繁に飛ばない、あるいはエコノミークラスの利用も多いとなると Miles & More では上級会員 (Sanator, 年間100,000ステータスマイル必要) まで到達できないので、ターキッシュエアラインズ(トルコ航空)の Mile & Smiles、エジプト航空の Egypt Air Plus、もしくはアシアナ航空の Asiana Club が現実的。

一時期、簡単にスターアライアンスゴールド資格が取れると話題になっていたエーゲ航空は、自社運航便を利用しない場合にはハードルが上がったようです。

Miles & Smiles
  • 上級会員資名: Elite
  • 初回条件: 1年間に40,000ステータスマイル
  • 有効期間: 2年間
  • 更新条件: 1年間25,000ステータスマイル、もしくは2年間で37,500ステータスマイル
  • 欧州発日本行ビジネスクラス特典航空券に必要なマイル: 90,000
Egypt Air Plus
  • 上級会員資格名: Golden
  • 初回条件: 30,000ステータスマイルを獲得するとSilverステータスとなり(期間制限なし)、その後、2年間で30,000ステータスマイルを獲得
  • 有効期間: 2年間
  • 更新条件: 2年間で30,000ステータスマイル
  • 欧州発日本行ビジネスクラス特典航空券に必要なマイル: 120,000
Asiana Club
  • 上級会員資格名: ダイヤモンド
  • 初回条件: 2年間に40,000ステータスマイル
  • 有効期間: 2年間
  • 更新条件: 2年間に40,000ステータスマイル
  • 欧州発日本行ビジネスクラス特典航空券に必要なマイル: 120,000

初回条件は Asiana Club が楽ですが、その後の資格維持や貯めたマイルを特典航空券に変えることを考えると Miles & Smiles が良さそうです。

資格維持に関して、数字だけ見ると Asiana Club が2年間で40,000に対して Mile & Smiles が2年間に37,500と大差ないように見えますが、同じ航空券で比較すると Asiana Club はマイルの加算レートがやや悪いので、実際には差が開きます。
たとえばスイスインターナショナルエアラインズのビジネスクラス正規割引運賃だとトルコ航空・エジプト航空は運行距離の150% 積算されるに対して、アシアナ航空は 125% 積算。安めのエコノミークラス正規割引運賃だと 75% 対 50% となり、それぞれ 25% 差がつきます。

また、トルコ航空はスターアライアンス各社の上級会員資格からのステータスマッチが可能らしいので、ANA ダイアモンドメンバーからのステータスマッチを申し込んでみようと思います。普通は共食いになるのを避けるため、同一アライアンスからのステータスマッチは認めないのですが、良いんですかね。

2015年12月18日金曜日

非居住者にとっての国民年金加入の損得

日本人在外居住者が、日本の国民年金に任意加入することに関する話。

日本にいると国籍を問わず日本の年金制度への加入は義務ですが、完全に日本を離れて国外在住となると、日本人であっても日本の年金制度への加入は任意となります。原則として、居住地の社会保障制度に加入してそちらで対応して下さい、ということです。

私はスイス現地法人で直接雇用されているため、日本の年金制度に加入する義務はない、ただし国民年金には希望すれば任意で加入可能という状態ですが、さて加入するべきかどうかということで検討してみました。

任意加入となると、純粋に金融商品として投資する価値があるか否かという視点で国民年金を見ることになります。貯蓄・投資に回せる資金が手元にある場合に、その使い道として
  • 国民年金に加入して保険料を支払う
  • スイスの厚生年金 (Pillar 2) に積み立てる
  • スイスの個人型確定拠出年金 (Pillar 3a) に積み立てる
  • 貯金する
  • 株式市場で運用する
  • 民間の年金保険に加入する
などの選択肢があり、どこに資金を回すのが最も得かという話になるわけです。

内部収益率法

金融商品の損得を計算する方法として IRR (内部収益率法) があります。ざっくり言えば、その金融商品が金利何%に相当するかを求めて判断材料とします。

たとえば手元に100万円あるとして、これを金利1%で銀行に1年間預けると101万円になります。これと比較して、たとえば100万円を預けると5年目に50万円、10年目に55万円もらえる債券はお得でしょうか?
一見すると100万円預けて105万円もらえるので得な気がしますが、実際には100万円預金しておくと毎年利子がもらえます。利子もそのまま預金しておくことにすると、10年後には約110万4,600円ほどになります。つまり債券を買うより預金しておいたほうがマシな選択肢だったわけです。

逆に、もし預金金利が0.64%未満であれば、債券を買ったほうが得になります。この 0.64% という数字が内部収益率です。手で計算しようとすると大変ですが、スプレッドシートを使えば一瞬で、Excel でも Google SpreadSheet でも IRR という組み込み関数があるので、毎年の支出・収入を入力して、その範囲に関数を適用するだけです。

注:債券には発行元が破産するなどして償還されないリスクがあり、売買手数料もかかるため、実際には預金よりも高い内部収益率でないと割に合いません。

国民年金の内部収益率(在外居住者)

国民年金は20歳から60歳まで毎年保険料を納めることで、65歳から死亡するまで定額の年金を受け取るという金融商品です。インフレや人口動態の変化に対応するための仕組みが入っており実際の年金支給額を計算するには複雑な計算が必要になりますが、簡単のために保険料・受給額とも現在の数値で固定して、男性は80歳、女性は85歳まで生きると想定します。
  • 20歳から40年間、毎年202,800円ずつ保険料を支払う
  • 65歳から平均寿命まで毎年788,892円ずつの年金を受け取る
この条件で計算すると、国民年金の内部収益率は男性で 1.15%, 女性で 1.98% となります。女性のほうが数字が良いのは、保険料は同一にも関わらず平均して5年間ほど長生きするためです。仮に年金財政が逼迫して年金支給開始年齢が引き上げられると、数字は悪化します。
  • 65歳から支給開始 男性  1.15% 女性 1.98%
  • 67歳から支給開始 男性  0.69% 女性 1.66%
  • 70歳から支給開始 男性 -0.08% 女性 1.15%
年金支給開始年齢が67歳程度まで引き上げられるのは、個人的には十分に想定される事態かなと思っています。

長期にわたって資金が固定され、かつ想定内部収益率が1% 未満となると、個人的には魅力的な投資対象とは言いがたいという判断になりました。

国民年金の内部収益率(日本居住者)

なお国民年金の損得は、日本に住んでいる場合には話が変わってきます。そもそも日本に住んでいる場合には年金制度への加入は義務ですが、ひとまずそれは置いておいて、純粋に金融商品として魅力的かどうかという観点で検討してみます。

日本在住の場合、収入から必要経費等を除いた所得に対して所得税と住民税が課されますが、この「必要経費等」に国民年金への拠出金も含まれます。
仮に所得税と住民税を合わせた税率が30%とすると、年金保険料202,800円を払うことで税金の支払いが60,840円少なくなるわけです。この差額分を保険料から相殺して考えると、
  • 20歳から40年間、毎年141,960円ずつ保険料を支払う
  • 65歳から平均寿命まで毎年788,892円ずつの年金を受け取る
となり、内部収益率は次のように変わります。
  • 65歳から支給開始 男性  2.20% 女性 2.95%
  • 67歳から支給開始 男性  1.73% 女性 2.60%
  • 70歳から支給開始 男性  0.93% 女性 2.06%
また国民年金に加入していると、年金受給開始前であっても、病気や怪我をして障害が残った場合には程度に応じて生涯にわたって障害基礎年金が支払われます。

男性だと年金自体の想定内部収益率は1%台になりますが、生涯にわたって年金が支払われるため予想外に長生きした場合のリスクに備えられること、障害基礎年金がついていることなどを考えると、純粋に金融商品として見た場合でも悪くない選択肢だと思います。

移転します

移転先:  https://blog2.issei.org/