所得税・住民税の比較
支払先は連邦、州 (Kanton)、そして基礎自治体 (Gemeinde) の3者。日本でも国に払う所得税と、都道府県ならびに基礎自治体に払う住民税(都道府県民税、区市区町村民税)があるので同じ構造です。
違いに着目すると、次のようになります。
- 納税額 (ある程度の所得がある場合)
- 日本 国税の割合が高い
- スイス 地方税の割合が高い
- 住民税率
- 日本 所得比例分の税率は一律10%(都道府県民税4%、区市町村民税6%)
- スイス 累進課税、かつ自治体毎に税率が異なる
- 納税単位
- 日本 個人単位
- スイス 夫婦単位
- 教会税
- 日本 なし
- スイス キリスト教の代表的宗派に属する信徒は納税の必要あり
スイスでは、納税方法が人によって異なります。給与所得者で本人もしくは配偶者がスイス国籍あるいは永住権 (C Permit) を保有している場合には確定申告、それ以外の資格 (B Permit, L Permit) で滞在している場合には源泉徴収(給与天引)となります。
源泉徴収の税率は州毎に決められた計算表があり、チューリッヒ州では収入額、家族構成ならびに教会税課税対象者かどうかで決まります。
源泉徴収の注意点ですが、住んでいる基礎自治体は考慮されません。基礎自治体毎に住民税の税率が異なるのですが、これが適用されるのは確定申告を行った場合のみで、源泉徴収ではどの基礎自治体に住んでいても、他の条件が同じであれば同額の税金が徴収されます。
また所得控除対象となる支出も個別には考慮されません。たとえば確定拠出年金に積立を行うと本来は所得から控除されるのですが、源泉徴収額は標準的なモデルケースに基づいて決められています。
なお年収 120,000 CHF を超える場合には確定申告が必須、それ以外でも本来は控除される金額が多い場合には自発的に確定申告を行うことが可能です。源泉徴収では税率は標準的なモデルケースに基づいて決められていますが、確定申告を行うと居住地や個別の収入・支出を反映して税額を再計算し、源泉徴収された額との差額が精算されます。
源泉徴収税率表の読み方
チューリッヒ州は公式 Web サイトで源泉徴収税率表を公開しています。
まず家族構成に応じて表が A, B, C と H の 4 種類あります。
- A: 独身者
- B: 既婚者、片親が専業主婦(夫)
- C: 既婚者、共働き
- H: 一人親家庭
- Mit Kirchensteuer 教会税を支払う場合
- Ohne Kirchensteuer 教会税を払わない場合
ここまでの収入以外の要因をまとめたものに、それぞれ固有のコードが振られています。たとえば既婚者・片働き (表B)、扶養子供2人 (2)、教会税支払いなし (N) だと B2N となります。あとは標準月額報酬に対応する行を見れば税率が分かるので、給与支給額に税率をかけて源泉徴収税額を求めます。
なお標準月額報酬は、年間の給与と想定される賞与額を加えた総額を12で割ったものです。
2015年の数値で計算すると、仮にB2Nの税率表(既婚者・片働き、扶養子供2名、教会税支払いなし)の適用を受ける人が年収96,000CHF(標準月額報酬CHF8,000)を得ていた場合、税率は2.71%で年間の源泉徴収税額は約2,600CHF、子供がいない B0N だと税率6.28%で源泉徴収税額は約6,030CHFとなります。
日本・スイス課税額比較
現在の為替レート (1CHF = 124円) だと年収96,000CHFは年収1,200万円に相当します。日本だと加入している健康保険などによって多少差がありますが、年収1,200万円で特に大きな控除がない場合、所得税が125万円、住民税が82万円ほど課税されます。したがって年間の所得税・住民税の合計額と実効税率を比較すると、次のようになります。
- スイス 子供なし 約6,030CHF (約75万円), 6.28%
- スイス 子供2人 約2,600CHF (約32万円), 2.71%
- 日本 約207万円, 17.25%
また日本はスイスと比較して生活費が安いので、年収1,200万円だと生活に余裕があり担税力が十分にあると見なされるのに対し、スイスの都市圏で年収96,000CHFはそこまで高給取りとはみなされていないという違いもあります。