日本にいると国籍を問わず日本の年金制度への加入は義務ですが、完全に日本を離れて国外在住となると、日本人であっても日本の年金制度への加入は任意となります。原則として、居住地の社会保障制度に加入してそちらで対応して下さい、ということです。
私はスイス現地法人で直接雇用されているため、日本の年金制度に加入する義務はない、ただし国民年金には希望すれば任意で加入可能という状態ですが、さて加入するべきかどうかということで検討してみました。
任意加入となると、純粋に金融商品として投資する価値があるか否かという視点で国民年金を見ることになります。貯蓄・投資に回せる資金が手元にある場合に、その使い道として
- 国民年金に加入して保険料を支払う
- スイスの厚生年金 (Pillar 2) に積み立てる
- スイスの個人型確定拠出年金 (Pillar 3a) に積み立てる
- 貯金する
- 株式市場で運用する
- 民間の年金保険に加入する
内部収益率法
金融商品の損得を計算する方法として IRR (内部収益率法) があります。ざっくり言えば、その金融商品が金利何%に相当するかを求めて判断材料とします。
たとえば手元に100万円あるとして、これを金利1%で銀行に1年間預けると101万円になります。これと比較して、たとえば100万円を預けると5年目に50万円、10年目に55万円もらえる債券はお得でしょうか?
一見すると100万円預けて105万円もらえるので得な気がしますが、実際には100万円預金しておくと毎年利子がもらえます。利子もそのまま預金しておくことにすると、10年後には約110万4,600円ほどになります。つまり債券を買うより預金しておいたほうがマシな選択肢だったわけです。
逆に、もし預金金利が0.64%未満であれば、債券を買ったほうが得になります。この 0.64% という数字が内部収益率です。手で計算しようとすると大変ですが、スプレッドシートを使えば一瞬で、Excel でも Google SpreadSheet でも IRR という組み込み関数があるので、毎年の支出・収入を入力して、その範囲に関数を適用するだけです。
注:債券には発行元が破産するなどして償還されないリスクがあり、売買手数料もかかるため、実際には預金よりも高い内部収益率でないと割に合いません。
国民年金の内部収益率(在外居住者)
国民年金は20歳から60歳まで毎年保険料を納めることで、65歳から死亡するまで定額の年金を受け取るという金融商品です。インフレや人口動態の変化に対応するための仕組みが入っており実際の年金支給額を計算するには複雑な計算が必要になりますが、簡単のために保険料・受給額とも現在の数値で固定して、男性は80歳、女性は85歳まで生きると想定します。
- 20歳から40年間、毎年202,800円ずつ保険料を支払う
- 65歳から平均寿命まで毎年788,892円ずつの年金を受け取る
- 65歳から支給開始 男性 1.15% 女性 1.98%
- 67歳から支給開始 男性 0.69% 女性 1.66%
- 70歳から支給開始 男性 -0.08% 女性 1.15%
年金支給開始年齢が67歳程度まで引き上げられるのは、個人的には十分に想定される事態かなと思っています。
長期にわたって資金が固定され、かつ想定内部収益率が1% 未満となると、個人的には魅力的な投資対象とは言いがたいという判断になりました。
国民年金の内部収益率(日本居住者)
なお国民年金の損得は、日本に住んでいる場合には話が変わってきます。そもそも日本に住んでいる場合には年金制度への加入は義務ですが、ひとまずそれは置いておいて、純粋に金融商品として魅力的かどうかという観点で検討してみます。
日本在住の場合、収入から必要経費等を除いた所得に対して所得税と住民税が課されますが、この「必要経費等」に国民年金への拠出金も含まれます。
仮に所得税と住民税を合わせた税率が30%とすると、年金保険料202,800円を払うことで税金の支払いが60,840円少なくなるわけです。この差額分を保険料から相殺して考えると、
男性だと年金自体の想定内部収益率は1%台になりますが、生涯にわたって年金が支払われるため予想外に長生きした場合のリスクに備えられること、障害基礎年金がついていることなどを考えると、純粋に金融商品として見た場合でも悪くない選択肢だと思います。
なお国民年金の損得は、日本に住んでいる場合には話が変わってきます。そもそも日本に住んでいる場合には年金制度への加入は義務ですが、ひとまずそれは置いておいて、純粋に金融商品として魅力的かどうかという観点で検討してみます。
日本在住の場合、収入から必要経費等を除いた所得に対して所得税と住民税が課されますが、この「必要経費等」に国民年金への拠出金も含まれます。
仮に所得税と住民税を合わせた税率が30%とすると、年金保険料202,800円を払うことで税金の支払いが60,840円少なくなるわけです。この差額分を保険料から相殺して考えると、
- 20歳から40年間、毎年141,960円ずつ保険料を支払う
- 65歳から平均寿命まで毎年788,892円ずつの年金を受け取る
- 65歳から支給開始 男性 2.20% 女性 2.95%
- 67歳から支給開始 男性 1.73% 女性 2.60%
- 70歳から支給開始 男性 0.93% 女性 2.06%
男性だと年金自体の想定内部収益率は1%台になりますが、生涯にわたって年金が支払われるため予想外に長生きした場合のリスクに備えられること、障害基礎年金がついていることなどを考えると、純粋に金融商品として見た場合でも悪くない選択肢だと思います。
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