2015年2月23日月曜日

スイスの自動車保険制度

スイスの自動車保険制度について。

日本で自動車を登録する場合、事前に自賠責保険に加入する必要があります。自賠責保険は交通事故の被害者を救済するための制度で、保険金は被害者に対する治療費等の支払いや死亡時には遺族に対する支払いに充てられます。

スイスも同様で、自動車を登録するためには、事前に自動車事故による第三者賠償責任をカバーする保険に加入する必要があります。

日本では、自賠責保険は保険料・支払い条件が保険会社によらず全て同じなので、加入者がどこの保険会社に加入するかを気にすることはほとんどありません。多くの場合は自動車販売店にお任せだと思います。しかしスイスでは、日本でいうところの自賠責保険と任意保険をセットにして保険会社が販売しており、保険金額も各社によって異なるため、加入者が自分で選択する必要があります。

自動車保険を購入する際に、まず検討するのは保険の範囲です。
Haftpflicht (第三者賠償責任保険)
自分の過失で歩行者や他の自動車などに損害を与えた場合の賠償責任をカバーします。日本の自動車保険だと、自賠責保険と任意保険の対人・対物保険を合わせたものに相当し、補償額は100億 CHF と事実上無制限になっています。
Teilkasko (限定車両保険)
自分の車両に対する保険。火事, 爆発, 盗難, 天災, 野生動物との衝突, ガラスの破損などをカバーします。 
Vollkasko (車両保険)
自分の車両に対する保険で Teilkasko に加えて自損を含む事故, 当て逃げにも対応します。
日本では自動車保険で対応する運転者・同乗者の怪我 (搭乗者障害保険, 人身傷害保険) は、スイスでは通常の傷害保険 (加入必須) でカバーされるために自動車保険には含まれません。

また第三者賠償責任は必須ですが、車両保険は任意です。新車や高価な車の場合には Vollkasko を掛けておいたほうが良いと思いますが、中古車の場合には保険料・リスクと買い替え費用を天秤にかけて検討することになると思います。
車両保険は夜間の駐車方法によっても値段が変わります。スイスでは許可された区画であれば路上駐車も可能ですが、その場合には車体が傷つけられるリスクが増えるため、保険料がやや高くなります。
また車両価格の算定基準として市場価格を用いるものと、事前に決められた償却率(たとえば初年度は新車定価の100-90%, 2年目は90%-82%など)を用いる方式があります。後者のほうが高めの価格になります。

なお Haftpflicht, Vollkasko には Bonus (無事故割引) があります。運転者の年齢が25歳以上で、過去5年以内に保険金請求を伴う事故や免停などの行政措置を受けていない場合には、最大で保険料が 30% から 35% 程度 (7割引〜6割5分引き) になります。また保険を使用しても年間1度までであれば事故にカウントしない、つまり翌年の保険料が据え置きとなる Bonusschutz (等級プロテクション) を付けることも可能です。

他に保険料に大きく影響するものとして Selbstbehalt (免責額) があります。日本と同様、一定額までは自己負担とし、それを超える場合にのみ保険金からの支払いを受けるというものです。
Selbstbehalt は細かく設定可能な場合が多く、たとえば Teilkasko でカバーされる範囲は自己負担なし、ガラスやライトの修理は自己負担200CHF、それ以外は1,000CHFなどという設定が可能です。

また保険会社と提携している自動車修理工場で修理を行うと免責額が下がるという特約を設定している保険会社もあります。

なお Teilkasko は保険料割引がない代わりに、保険を使用しても保険料の値上げはありません。基本的に本人の過失によらないリスクをカバーしている保険だからでしょう。

他に、これに追加できる保険やサービスがいくつかあります。
Parkschäden / Schäden am parkierten Fahrzeug (駐車車両に対する保険)
駐車している間に自分の車両が受けた損害に対する保険。ショッピングセンターの駐車場で当て逃げされたとか、ドアをぶつけられてできた傷をカバーします。
Grobfahrlässigkeit (重過失保険)
運転者に重大な過失、たとえば信号無視などがあった場合には保険会社は保険金支払いを減額することが可能です。それをカバーする保険です。
Assistance (ロードアシスタンス)
自動車に関する日常的なトラブル、たとえばガス欠、バッテリー上がりやパンクなどの緊急対応を無料もしくは安価で行います。 
Unfall (傷害保険)
搭乗者の怪我をカバーします。通常は一般の傷害保険でカバーされますが、その保障に上乗せしたい場合に。
以上を勘案して購入する保険を決めて保険会社に契約を申し込み、保険会社から州の交通局に保険加入の通知を行ってもらいます。この通知を受けて、州交通局は自動車登録証の発行を行います。

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