スイスから隣国に買い物に行く際の税金の扱いについて
スイスはドイツ、フランス、イタリアなどと陸続きですが、いずれもシェンゲン協定に加盟しており入出国審査が省略されます。国境にはかつての名残で検問所がありますが、日本の有料道路料金所のような作りで、基本的には審査もなく車に乗ったまま簡単に通過できます (ストリートビューで見る)。
日本では外国に行くというと大事ですが、スイスでは物理的にアクセスが容易なのと、また隣国のほうが物価が安いという事情もあり、週末になると外国まで車で買い出しに出かける人を多く見かけます。たとえばバーゼルから出国してすぐの Weil am Rhein にあるショッピングモール Rhein Center などは、まさにスイスからの越境ショッピング客をターゲットにした立地です。
スイスから出国し、日用品を購入して戻ってきた場合の税金関係の手続きに関して、必要があって調べたのでまとめておきます。(2014/10/19現在)
たとえばドイツで日用品を購入しスイスに持ち込む場合、ドイツで商品代金と一緒に支払う VAT (付加価値税) の扱いと、スイスに輸入する際の VAT 支払いが問題になります。
結論から書くと、ドイツでは商品の代金とともに VAT を支払う必要がありますが、後日一部還付を受けられます。またスイスでは、週末に買い出しに行く日用品程度であれば免税です。
ドイツ VAT還付条件
- 1店舗における購入額が EUR 25 以上
- 2015年1月31日追記: 払い戻しを代行業者に依頼する場合には手数料の関係で最低額がありますが、自分で行う場合には2019年末までは下限はありません。
- なお2020年から当面の間、1店舗あたり EUR 50 以上の場合のみ払い戻しの対象となります。その後、スマートホンアプリを利用した新システムの稼働が予定されており、新システム導入後には再び下限が撤廃される見込み。
- 当該店舗が tax free shopping に対応していること
- 購入者が非 EU 圏に居住しており、国外に持ち出して個人で使用する物品であること。
- VAT 還付対象品目であること(サービスや自動車関連用品は対象外)
スイス関税免除条件
- 輸入総額が1人1日あたり CHF 300 以下であること
- 超えた場合には、超過分だけでなく全額に対してスイス側の VAT がかかる。税率は一般品目7.7%、特定品目(食料など)2.5%(2019年3月31日追記: 2018年に一般品目の税率が8%から7.7%に下がりました)
- 個別品目の上限を超えないこと
- 超えた場合には、その品目に対してだけ個別に税金がかかる
- 免税範囲 (1人, 1日あたり)
- 肉 1kg (狩猟で得たのもは除く)
- バター・クリーム 1kg
- 油・脂肪・マーガリン 5kg
- アルコール飲料 (アルコール度数18%未満) 5l (17歳以上)
- アルコール飲料 (アルコール度数18%以上) 1l (17歳以上)
- タバコ類 250本
手続
スイス滞在・労働許可申請
スイスで外国人が就労する場合、その国籍によって要件が大きく異なります。
EU/EFTA (欧州連合/欧州自由貿易連合) 加盟国の国民は、入国前に仕事が決まっていなくても構いません。入国してから3ヶ月間は就職活動期間として認められます。
日本も含めて、それ以外(第三国と呼ばれます)の国民は事前にスイスの企業と雇用契約を結び、労働許可証を取得しておく必要があります。労働許可証の発行の条件は厳しく、また発行数にも上限が設けられています(参考: スイス連邦移民局 EU/EFTA非加盟国の国民に対する就労許可)。
第三国の国民が就労することは、スイスおよび EU/EFTA の労働市場から適切な人材を雇用できない場合に限って認められています (Art. 21 AuG)。特殊なケースを除くと、大学卒業後に専門分野で複数年の経験を積んだ管理職や専門職、高度な能力のある料理人や職人、もしくは日本料理や日本伝統工芸のような日本文化に深く根ざした職業に就いている場合にのみ門戸が開かれていると言って良いと思います。
滞在・労働許可証の申請に際して、労働者側が用意する書類は次の通りです。
- パスポートのコピー(同居家族分も含む)
- 職務履歴書
- 学位証明書
- 雇用契約書
- 婚姻証明(配偶者がいる場合)
- 出生証明(子供がいる場合)
- 現在の企業の雇用証明書
これに、雇用者側が EU/EFTA の労働市場からでは人材を雇用できなかったという証明などをつけた上で、州政府の雇用担当課に提出します。その後、州政府と連邦政府が審査を行い、認められれば「滞在許可の確約書」(Zusicherung der Aufenthaltsbewilligung) が発行されます。
ところで必要書類のうち婚姻証明と出生証明ですが、これは日本人の場合は戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)とその翻訳になります。またスイス側では日本の公文書の真偽を確かめることができないため、原本と翻訳が真正のものであることを保証するために外務省の証明(アポスティーユ)が求められます。
アポスティーユ取得手続
- 翻訳者が公証役場に出向き、公証人の前で「この文書は戸籍全部事項証明書の原本と、その忠実な翻訳である」旨の文書に署名する。
- 公証人が、翻訳者(嘱託人)が書面に署名したことを認証し、署名捺印を行う。
- 法務局長が、署名・捺印は登録された公証人のものであることを証明し、法務局長公印を押印する。
- 外務省が法務局長公印を認証し、アポスティーユを書類に付与する。
ややこしいですが、こうすることで初めてスイス州政府・連邦政府⇛スイス外務省⇛日本外務省⇛法務局⇛公証人⇛翻訳者という信頼の連鎖が成立します。
アポスティーユをとるには、本来は公証役場、法務局、外務省と回る必要がありますが、東京・神奈川・大阪の公証役場では 2-4 をワンストップで行えるサービスを提供しています。これらの都府県で翻訳からアポスティーユの取得までを一括で業者に依頼した場合、費用は公証手数料11,500円を含めて22,000円から30,000円程度になります。
スイス滞在資格
スイスに長期滞在する、たとえばスイスの大学で学んだりスイスの企業に就職する場合でも、日本人は査証(ビザ)を取る必要がありません。では何も手続きがいらないのかというと、そんなことはありません。
一般に外国への入国に際しては、査証、滞在許可(在留許可)と就労許可の 3 つが必要となります。ただし国によって査証の発給=滞在許可だったり、目的によってはいくつか免除されていたりするので、話が混乱しがち。
整理しましょう。
査証とは、外国に入国する際に必要となる書類の一つです。一般には、入国を希望する旅行者が事前に自国あるいは居住国にある在外公館に申請を行い、受入国側が審査の上で入国させても問題ないと判断された場合に発給されます。なお、査証が発給されていても入国審査で拒否される可能性はあります。
滞在許可とは外国に滞在する許可です。入国を許可されても、無限にその国に滞在できるわけではありませんし、滞在地などにも制約が課されることがあります。
最後に就労許可とは、外国で収入を伴う活動を行うことに対する許可です。観光・留学や年金や投資からあがる資金を利用しての滞在ではなく、その国で仕事に就く場合に必要になります。
では、いくつか事例をもとに見てみましょう。
観光や仕事目的でのスイスに90日以内の滞在
日本人であれば査証は不要、90日以内であれば滞在許可も不要です。観光や、仕事であっても会議への出席など収入を伴う作業に従事することがなければ、就労許可も不要。つまりパスポートだけ持っていけば OK です。
日本からスイスの企業に1年間派遣される(海外赴任)
日本人であれば査証は不要ですが、滞在許可・就労許可が必要となります。滞在許可については、事前に然るべき手続きを行い、入国前に受け入れ先の州政府から「滞在許可の確約書」(Zusicherung der Aufenthaltsbewilligung) というものを取得しておく必要があります。入国後に、この書類を持って役所に行き登録を行うことで正式な滞在許可書が発行されます。就労許可は、スイス側の受け入れ先企業が州政府の移民局から取得する必要があります。
滞在許可にはいくつかの種類がありますが、このケースでは短期滞在向けで、更新回数に制約があるL滞在許可証が発行されることが多いようです。
スイスの企業に就職
このケースも海外赴任とほぼ同じ手続きとなりますが、発行されるのはL滞在許可証、もしくはB滞在許可証となります。最初にL滞在許可証が発行された場合、何度目かの更新時にB滞在許可証に切り替わるようです。B滞在許可証は1年間有効で更新可能。
L滞在許可証、B滞在許可証いずれも、原則として雇用先企業に紐付けられる形で発行されるため、転職は不可です。別のスイス企業に勤める場合には、滞在許可・労働許可を1から取り直し。また居住地も雇用先と同一州に限られるなど、いくつかの制限があります。
なおL滞在許可証が発給された場合、配偶者は就労できませんが、B滞在許可では配偶者の就労も認められます。