退職所得の選択課税

日本企業を退職して海外の企業に就職する場合に、日本企業から支給される退職金に対する税金の扱いについて。

普通に日本企業を退職して日本で退職金を受け取る場合でも退職金には所得税がかかりますが、その税額はきわめて低く抑えられています。

たとえば勤続年数10年で退職金が600万円支給された場合、退職所得控除が勤続年数10年で400万円あり、かつ課税退職所得金額は (退職金 - 退職控除) x 1/2 で計算されるため(600万円 - 400万円) x 1/2 で 100万円となります。

課税退職所得が195万円以下の場合、所得税率は5%のため、復興特別所得税 (所得税の 2.1%) を含めて最終的な課税額は51,050円となります。

参考


ただし、この計算方法が適用されるためには、退職金受け取り時に税法上の居住者である必要があります。退職金が支給される前に出国し税法上の非居住者となっていた場合には、退職金支給額の20.42%が源泉徴収されます。退職所得控除や税率の累進課税の適用は一切ありません。
たとえば退職金が600万円の場合には、源泉所得税として1,225,200円が差し引かれ4,774,800円が支払われます。

さすがに出国のタイミングで税額が大きく異なるのは不公平だということで、税務署に申告を行うことで、居住者と同様の課税ルールを適用して所得税額を再計算し、差額の還付を受けることが可能です。根拠となるのは所得税法第百七十一条です。
(退職所得についての選択課税)
第百七十一条  第百六十九条(課税標準)に規定する非居住者が第百六十一条第八号ハ(居住者として行つた勤務に基因する退職手当等)の規定に該当する退職手当等(第三十条第一項(退職所得)に規定する退職手当等をいう。以下この節において同じ。)の支払を受ける場合には、その者は、前条の規定にかかわらず、当該退職手当等について、その支払の基因となつた退職(その年中に支払を受ける当該退職手当等が二以上ある場合には、それぞれの退職手当等の支払の基因となつた退職)を事由としてその年中に支払を受ける退職手当等の総額を居住者として受けたものとみなして、これに第三十条及び第八十九条(税率)の規定を適用するものとした場合の税額に相当する金額により所得税を課されることを選択することができる。
なお、この場合でも支給時に必ず一度は20.42%を源泉徴収されるため、支給後に税務署に申告を行う必要があります。


私は2015年1月に Google の日本オフィスからスイスオフィスに異動しましたが、手続き上はグーグル株式会社(Google の日本現地法人)を退職して Google Switzerland GmbH(グーグルのスイス現地法人)に雇用という形でした。
退職から退職金の支給までには一ヶ月強の時間差があるため、退職金支給日にはすでにスイス現地法人での勤務を開始しており、日本の税法上は非居住者でした。したがって支給される退職金からは20.42%が源泉徴収されており、徴収されすぎた所得税の還付を受けるために日本の税務署に申告を行う必要がありました。

退職所得の選択課税専用の申告書は存在しないため、自分で申告書を作成する必要があります。申告書に記載する内容については所得税法第百七十三条と所得税法施行令第七十条で規定されていますが、申告書を一から自分で作成するのは大変なので、私は下記の blog 記事を参考に確定申告書B様式に修正を加えて申告書を作成し、日本にいる納税代理人を通じて所轄税務署に郵送しました。
税務署から申告書受理の連絡は来たので、現在は還付確定連絡待ちです。


税金は、こういう知らないと損をする、あるいは知らなうちに脱税になってしまうというケースがあり、専門家の助言がないと怖いですね。特に国をまたぐ場合には。

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