2014年11月14日金曜日

スイス滞在資格 続き

日本人を含む非EU/EFTA国出身者がスイスの企業に派遣、あるいは直接雇用される場合には、受け入れ先の州政府からL滞在許可証、B滞在許可証、もしくはC滞在許可証を取得する必要があります。公的に決められている違いと、現実社会で遭遇する待遇の違いについて。

公式な話

L滞在許可(短期滞在許可)

雇用先がスポンサーとなって州当局に申請を行い、3ヶ月以上、1年以内の短期滞在が許可された場合に発行されます。更新回数に制限があり最長で2年まで延長可能。なおスポンサー企業と雇用関係がなくなった場合には滞在許可は取り消され、住居は雇用先と同一州に限られます。
配偶者、扶養対象の子どもにもL滞在許可が発行されます。ただし労働許可は本人に対するもののみで、配偶者が就労するには、別途スポンサーの支援を得た上で州当局に申請を行い、労働許可を取得する必要があります。

2014年現在、高度人材に対するL滞在許可の年間新規発行数は全国で5,000に制限されています。

B滞在許可(長期滞在許可)

雇用先がスポンサーとなって州当局に申請を行い、1年以上の長期滞在が許可された場合に発行されます。1年間有効で更新回数の制限なし。L滞在許可証と同様、スポンサー企業と雇用関係がなくなった場合には滞在許可は取り消され、住居は雇用先と同一州に限られます。
配偶者、扶養対象の子どもにもB滞在許可が発行され、配偶者も就労が許可されます。

L滞在許可と異なり、B滞在許可申請時には犯罪経歴も調査されます。日本在住者がスイスでB滞在許可を取る場合には、日本の警察当局から犯罪経歴証明書の発行を受け、それを州の移民局に提出することになります(参考: 警視庁 渡航証明の申請について

2014年現在、高度人材に対するL滞在許可の年間新規発行数は全国で3,500に制限されています。これにはL滞在許可からB滞在許可に切り替える数も含まれます。

C滞在許可(定住許可)

B滞在許可を取得して継続して10年間以上スイスに滞在した場合、もしくは継続して5年間以上滞在し、かつスイス社会に良く統合されていると認められた場合に発行されます。雇用先や住居の制限がなくなり、経済的にはスイス人と同等の権利が認められます。

非EU/EFTA国出身者がスイスの企業に派遣、もしくは雇用されて就労する目的で滞在許可を申請する場合、まずはL滞在許可が発行され、1年もしくは2年後にB滞在許可に切り替えるケースが多いようです。受け入れ側で特に欲しいと思った人材には、最初からB滞在許可を発行するケースもあります。

私が2011年にチューリッヒに赴任した際には、まず1年有効のL滞在許可が発行され、その有効期限(1年)が切れる1ヶ月ほど前に「B滞在許可に切り替えるので必要書類を持ってきてください」という手紙が送られてきました。ただし、元々1年間の海外赴任だったので、更新せずに帰国しましたけど。

実生活上の話

短期滞在で経済基盤がスイス外にある場合には、L滞在許可とB滞在許可の差は大きくありません。しかし経済基盤をスイスに移すとなると、L滞在許可では次のような場面で制約を受けます。
  • クレジットカードの発行を受けにくい
  • 家を借りにくい
  • 配偶者が職につけない
L滞在許可はあくまで短期滞在許可で、経済的には不安定だと判断されがちです。たとえ雇用契約に期限の定めがない正社員だったとしてもL滞在許可の延長が認められなかったりB滞在許可に切り替えられないリスクがあり、その場合には帰国する以外の選択肢はありません。
大家側としては、L滞在許可保持者に物件を貸した場合は賃貸契約が短期で解約となるリスクが相対的に高くなるため、複数の入居申し込みがあればB/C滞在許可保持者を優先するのは自然な発想です。

また配偶者が職につけないのも長期になると経済的にも影響が大きいですし、人間関係を築いていく上でも、仕事を通じて人と知り合う機会が制限されます。

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